エレクトーンのMIDIインプリメンテーションチャート(MIDI IMPLEMENTATION CHART)を読んでみようと思います。MIDIインプリメンテーションチャートはMIDIを搭載した楽器とPC(PCとは限らないのですが…ここでは面倒なのでPCとしておきます。)との間でMIDIのやり取りをする為の仕様書です。エレクトーンがどのようなMIDIデータを出力するのか、エレクトーンがどのようなMIDIデータを入力として受け付けるのかが記載されています。ですのでMIDIインプリメンテーションチャートは、MIDIを搭載した楽器には必ず取説などに掲載されているはずです。ここでは手持ちのエレクトーン(ELB-01)のチャートを読みたいと思います。エレクトーンとPCでMIDIを接続します。接続の方法はこちらのページを見てください。
MIDIインプリメンテーションチャートは「ELB-01 取扱説明書」の巻末に掲載されています。ELB-01 取扱説明書をヤマハのサイトからダウンロードします。
MIDIインプリメンテーションチャートは「ELB-01 取扱説明書」のp.205とp.206にあります。p.205は「Electone-EL mode」、p.206は「Electone-XG mode」と書かれています。このエレクトーンにはMIDIという切り口で見ると2つのモードがあるということがわかります。
エレクトーンは電源を入れた瞬間は「Electone-EL mode」になっています。取扱説明書を見ても書かれていないようなのですが、試してみるとElectone-EL modeであることがわかります。
ここでは、先にp.205の「Electone-EL mode」のMIDIインプリメンテーションチャートを見てみます。
インプリメンテーションチャートから、ベーシックチャンネル、ノートナンバー、ベロシティを拾ってみます。(一部端折ります。)
ファンクション | 送信 | 受信 | |
---|---|---|---|
ベーシックチャンネル | 電源ON時 設定可能 | 1, 2, 3, 16(*1) 1-16 | 1-3, 5-16(*2) 4 |
ノートナンバー | 音域 | 36-96(*3) ******** | 0-127(*4) |
ベロシティ | ノートオン ノートオフ | 〇9nH, v=1-127 〇9nH, v=0 | 〇9nH, v=1-127 〇9nH, v=0 or 8nH |
「送信」はエレクトーンを操作するとどんな種類のMIDIが出力されるかを示しています。「受信」はエレクトーンで受信できるMIDIデータの種類を示しています。
送信
エレクトーンの鍵盤を押すと、どのようなMIDIデータが出力されるかが、この3つの項目からわかります。(*1)の注釈に書かれていることを整理すると以下のようになります。値はHEXです。
鍵盤 | チャンネル | ノートオン | ノートオフ |
---|---|---|---|
上鍵盤 | 1 | 0x90 k1 vv | 0x90 k1 0x00 |
下鍵盤 | 2 | 0x91 k2 vv | 0x91 k2 0x00 |
足鍵盤 | 3 | 0x92 k3 vv | 0x92 k3 0x00 |
コントロールチェンジ | |||
コントロール | 16 | 0xBF cc dd |
コントロールについては別に書きます。
k1, k2, k3はノート番号、押した鍵盤の番号が入ります。(*3)の情報から以下のようにわかります。
鍵盤 | ノート番号(DEC) | ノート番号(HEX) | |
---|---|---|---|
上鍵盤 | k1 | 36 - 96 | 0x24 - 0x60 |
下鍵盤 | k2 | 36 - 96 | 0x24 - 0x60 |
足鍵盤 | k3 | 36 - 60 | 0x24 - 0x3C |
vvはベロシティです。鍵盤を叩く強さのデータが入ります。強く叩くと0x7F(127)が、一番弱い場合は0x01(1)が入ります。この値がゼロの場合はノートオフ、鍵盤を離したという情報となります。
ベーシックチャンネルの変更可能という行を見ると、送信に1-16 と書かれています。 これは、で1, 2, 3, 16 という鍵盤ごとのチャンネル番号を変更することができる、 という意味です。「ユーティリティ」の「MIDIアウトチャンネル」のページで上鍵盤(UK)、下鍵盤(LK)、足鍵盤(PK)のMIDIのチャンネル番号が設定できます。 下にLCDの画面を表示します。LEDの右上済みに読みにくいえdすが"4"とい反転文字が書かれています。 説明は説明書のp.188の「MIDIアウトチャンネル」に記載があります。
受信
エレクトーンを弾いて送信したMIDIデータを、PCで録音してこれをエレクトーンに送り返せばエレクトーンは弾いたときと同じように鳴るはずです。ですので、受信側のチャートには送信側のチャートに書かれているものが含まれている必要があります。
上に書いた表を送信側と受信側で見比べるといくつか違いがあります。ベーシックチャンネルの受信側の(*2)によると、1,2,3,16は送信側と同じです。5-14はXG-と書かれていますので、鍵盤とは関係なくXG-Modeと同じ音が鳴ります。4はリードボイスと書かれていていますで上鍵盤のアサインされているリードボイスが鳴ります。また15はキーボードパーカッションを鳴らす事ができます。ややこしいので図示してみると下の図のようになります。
1, 2, 3,16が双方向、4, 5-15はPCからエレクトーンへの片方向です。
受信できるノートナンバーは0から127と7ビットの全体であると書かれています。送信はエレクトーンの鍵盤の数でノートナンバーの上限、下限が決められています。受信側は鍵盤の外側(低音側、高音側)のデータも受けて音を出してくれます。
ノートオンに不随するベロシティの範囲1-127は送信、受信とも同じです。ノートオフについては、ベロシティがゼロであることで鍵盤を離した(ノートオフ)を表すと同時に、受信では0x80で始まるノートイベントでノートオフを受信すると書かれています。
ファンクション | 送信 | 受信 | |
---|---|---|---|
モード | 電源ON時 メッセージ 代用 |
モード3 × ******************** | モード3 × × |
送信も受信も電源ON時はモード3です。メッセージが×になっていますので、MIDIでは変更できないという意味です。代用、という欄は意味が残念ながらわかりません。
モードの種類は表の一番下、欄外に記載があります。オムニという機能のオン、オフと、ポリもしくはモノの組合せで1,2,3,4と4つに分類されています。
ですので、エレクトーンは電源を入れた時、モード3:オムニ・オフ、ポリ、に設定されていて、MIDIでは変更できない、ということになります。
オムニとは、「ミュージック・クリエーター・ハンドブック」によると以下のように書かれています。
「オムニモードがオンの場合は、MIDI機器が受信したMIDI信号が受信するMIDI機器で、異なるチャンネルに設定されていても必ず反応するように設定するものです。中略 MIDIが登場した初期はノート情報を1チャンネル、コントロールチェンジ情報を2チャンネルといったようにチャンネルを分けて送ることも多かったため…」
要するにチャンネルを無視して、どのチャンネルのデータでもMIDI機器は音が出ますし、コントロールチェンジに対して反応します。しかしながら、今時の機能ではありません。
ポリ、モノのポリとはピアノのように和音を弾いたときに、弾いた数だけ音が鳴ることを意味しています。モノは和音を弾いても1音しかなりません。モノは例えばメロディを演奏する時に使うモードです。例えばポルタメントなど、演奏に独特な効果を付けたいときに使います。
ファンクション | 送信 | 受信 | |
---|---|---|---|
アフタータッチ | キー別 | × | 〇(*5) |
チャンネル別 | 〇(**1) | 〇 | |
ピッチベンド | 〇(**1) | 〇(*5) |
(**1)たぶん×が正解で、表の間違いだと思います。
アフタータッチは鍵盤を弾いた後に力を入れて押し込む力の大きさを表しています。アフタータッチには2種類あります。キー別とは、例えばドミソと3つの音を弾いたとして、ミだえ押し込むことでミだけの力の大きさを送ることができます。これにより受け取った側では、ミの音だけに効果をかけることができます。チャンネル別とは、ドミソと3つの音を弾いたとして、ミを押し込んだ場合でも、ドと押した場合でも同じメッセージが送られます。受け取った側では、ドミソの3つの音全部に効果がかかります。
キー別はMIDIデータの形としては、AnH kkH vvH です。nはチャンネル番号、kkはキーの番号、vvが力の大きさを表しています。どのキーをどんな力で押し込んだかがわかります。チャンネル別はMIDIデータの形として、DnH vvHとなります。チャンネルに1つだけのデータなのでキーの番号は無く、2バイト目に力の大きさが入っています。
エレクトーンからの送信はチャンネル別のアフタータッチが送信できると書かれています。しかし、ELB-01では送信できませんでした。この表が間違っているような気がします。受信についても、(*5)に書かれている通りXGのみとなっています。ですのでキー別アフタータッチはチャンネル5-15のみが反応します。P.195のMIDIデータフォーマットの「ポリフォニックアフタータッチ」の欄が正しいものと思われます。こちらでは送信は×となっています。ポリフォニックアフタータッチと、チャンネル別のアフタータッチは同じ意味です。
ピッチベンドもチャンネル別のアフタータッチと同様、表が間違っている気がします。エレクトーンからピッチベンド送信する手だてがありません。ちなみにELB-02では鍵盤を横へ揺らすことでピッチベンドが出力できるそうです。持っていないのでわかりませんが。P196の上の表では5-14chがXGとして受信できるというのが正解なのだと思います。